冷凍技術
品質の良い冷凍品を作るには、一にも二にも、冷凍スピードが大切です。よく、解凍するとドリップが沢山出る商品を見かけますが、これは冷凍スピードが遅いために起こる現象です。魚を例に話をすすめます。魚を凍らせる過程で、細胞幕の中の水分が膨張します。
水分が膨張する温度帯は0度~マイナス5度です。この温度帯をゆっくり通過させると、水分は膨張し、細胞の内側から細胞幕を破ってしまいます。その結果、解凍したときに中のドリップが流出してしまうということになります。旨みなども流出してしまい、美味しくない魚が出来てしまうわけです。
そこで解決策としては、如何に早くこの温度帯を通過させるかがポイントになります。素早くこの温度帯を通過させることによって、細胞膜を傷つけずに凍らせることができ、解凍しても旨みが流出しないわけです。私どもの冷凍品は、魚を真空包装し、更に真空包装するという二重の真空包装をします。(これは万一真空包装が解けて、液体が中に付着することを防ぐためです。)そして、マイナス65度まで温度を下げた液体に直接入れることによって、0度~マイナス5度の温度帯を一気に通過させます。イカですと、ほんの数秒で凍ってしまうほどの速さです。
よく見かけるのは、金魚を液体窒素の中に入れて凍らせ、その後水に落とすと生き返るという実験を見ますが、良く似た方法です。液体窒素はおよそマイナス180度前後あり、ほとんどのものを凍らせる力があります。しかし、コストが高く、商品に噴霧するというような方法でしか使えません。
さて、飲食店様が鮮魚を使ったりしたあと、残った魚を冷凍保存したいというときに役立つ知恵をいくつか書いてみます。コストをかけて作ることは誰にでもできますので、いかにコストをかけずに良い品質の冷凍品を作るかに焦点を当てて考えます。
あまり大きな食材には使えませんが、身の薄い魚などに使える方法です。まずは凍らない液体を用意します。アマノール、ナイブラインなどの食品衛生上万一口に入っても害のないアルコールを敗れない袋に入れて冷凍庫に入れます。また、畜冷剤に使用されるものをお使いになられるのも良いでしょう。業務用冷凍庫で十分に冷やします。(このとき、温度が低いほど早く食材を凍らせることができます。)
店内で使う冷凍機はマイナス20~25度くらいでしょうか。この温度ですと、少し心もとないため、まず食材を0度近くまで、冷やしておきます。そして食材がよく冷えたら、冷凍庫でよく冷やしておいた袋に挟んで冷凍庫に入れ、一気に凍らせます。
注意点としては、凍らせるために使う液体が、食材が凍るまでに食材の温度と近い温度になってしまうことです。こうなってしまうと、逆効果を生みます。凍らせる媒体ともに冷やしてこないとだめなため、空冷より時間がかかってしまいます。
凍らせる食材に対して適性な量の液体を使うことが肝心です。この方法ですと、フィレにした魚などを品質良く冷凍できます。冷凍する食材をビニール袋などに入れて空気を抜いてから凍らせると尚良いでしょう。空気を触れさせないことによって酸化と、水分蒸発を防ぐことができます。
一見凍っていても、マイナス30度以下の冷凍食品は完全に凍っておらず、冷凍庫内で水分蒸発が起き、霜がついたりするのです。マイナス30度以下の温度で保管すると数倍の品質保持ができるのは、こういった所以です。太古のマンモスなどが腐敗せず、形として残っているのは、温度が極めて低く、氷に閉ざされ空気に触れていないからです。
チルド庫などがあれば、庫内でよく冷やしてから凍らせると中まで早く凍ります。
私たちは食材によって、液体窒素ガス、急速空冷、二酸化炭素(ドライアイスの粉末)なども使いますが、真空包装できる魚はほとんど液体凍結法を用います。最高品質でありながら、コストパフォーマンスが高いからです。